2024年5月8日水曜日

我が国のサイバーセキュリティ戦略:安心・安全なデジタル社会を実現するために

近年、デジタル社会の急速な発展に伴い、サイバー空間が経済活動から日常生活に至るまで重要な役割を果たすようになっています。しかし、その一方でサイバー攻撃の脅威も増加・多様化し、日本政府はこれに対応するための戦略を整備する必要性に迫られています。  

総務省が公開した「我が国のサイバーセキュリティ戦略」は、国家と国民の安全を守り、日本がデジタル社会の中でリーダーシップを発揮するための重要な取り組みです。本記事では、その戦略内容と重要な施策について詳しく解説し、デジタル社会の中で日本が果たすべき役割について考察します。



サイバーセキュリティの重要性

デジタル化が進む社会

我が国はデジタル化の推進を通じて、経済成長と豊かな国民生活を目指しています。しかし、サイバー空間が社会全体で不可欠なインフラとなる一方、サイバー攻撃はますます多様化・高度化し、そのリスクも増大しています。サイバー攻撃は国家や社会システムに重大な影響を及ぼすため、経済活動と生活の安定にはサイバーセキュリティの確保が不可欠です。


国際的な脅威の現状

サイバー空間における脅威は国家・非国家アクターを問わず国際的に広がっています。特に国家によるハイブリッド戦争の一環としてサイバー攻撃が利用されるケースが増えており、国際的なサイバーセキュリティ規範と協力体制の整備が急務です。


日本のサイバーセキュリティ戦略の概要

基本理念

1. 自由、公正、平等なサイバー空間の実現

  誰もがサイバー空間を安心して利用できる社会を実現し、デジタル社会での権利と自由を確保します。

  

2. 経済成長とサイバーセキュリティの両立

  経済成長を妨げず、サイバー空間のセキュリティを確保します。


3. 国家・社会のセキュリティ確保

  国家と社会のセキュリティを守り、サイバー攻撃に対応できる強固な体制を築きます。


戦略の目標

1. 経済活動の維持と社会の安定

  サイバー攻撃から経済活動を守り、社会全体の安定を確保します。

  

2. 国民の安心・安全な生活の実現

  国民のプライバシーと安全を守り、安心して生活できる社会を築きます。

  

3. 国家機能の確保と国際的な連携強化

  国家の重要機能を守り、国際社会と連携してサイバー攻撃に対応します。


重点施策

官民の連携強化

1. 重要インフラ事業者との連携

  重要インフラ事業者と政府間で連携し、インシデント情報の共有や対策の強化を図ります。  

  - サイバーセキュリティインシデント対応協議会の活用。  

  - 官民合同のサイバーセキュリティ訓練の実施。  

  - サイバー攻撃に対する緊急対応体制の整備。  


2. インシデント情報共有の強化

  官民でサイバー攻撃に関する情報を共有し、早期警戒体制を強化します。


人材育成と技術開発

1. サイバーセキュリティ人材の確保

  サイバーセキュリティ人材の育成と確保を進めるため、専門教育や訓練プログラムを拡充します。  

  - サイバーセキュリティ専門家養成プログラムの設立。  

  - 企業内トレーニングプログラムの支援。  

  - サイバーセキュリティ人材バンクの活用。  


2. 研究開発の支援と産学連携の強化

  先端技術の研究開発支援と産学連携を強化し、サイバーセキュリティ技術の向上を図ります。


法制度と規範の整備

1. サイバー犯罪対策法の改正

  サイバー犯罪に対処するための法制度を整備し、攻撃者への罰則強化を図ります。  

  - 不正アクセス禁止法の改正。  

  - 電磁的記録に関する犯罪の処罰強化。  


2. 国際規範の構築

  国際的なサイバーセキュリティ規範の構築を目指し、各国との協力を進めます。  

  - 国際連合やG7などでの国際規範策定。  

  - 各国とのサイバーセキュリティ協力協定の締結。  


産業競争力の向上

1. サイバーセキュリティ技術産業の振興

  サイバーセキュリティ技術産業の振興を図り、日本の技術力を高めます。  

  - 新たな技術産業創出への支援。  

  - サイバーセキュリティ企業の国際競争力強化。  


2. セキュリティサービスの利用拡大

  企業や個人がセキュリティサービスを利用しやすい環境を整備します。  

  - 中小企業向けサイバーセキュリティサービスの提供。  

  - 個人情報保護とセキュリティに関する啓発活動。  


国際的な協力と連携

国際的な規範とガバナンス

1. 国際的なサイバー攻撃抑止

  国際社会と協力して、サイバー攻撃の抑止と規範の整備を進めます。  

  - 国際連合でのサイバーセキュリティ規範の策定。  

  - G7でのサイバーセキュリティ協力強化。  


2. 国際連携による攻撃対応体制の整備

  各国のサイバーセキュリティ機関と協力し、サイバー攻撃への対応体制を強化します。  

  - 国家間でのインシデント情報共有システムの構築。  

  - サイバーセキュリティ連携訓練の実施。  


**アジア太平洋地域での協力**

1. ASEAN諸国との共同訓練と情報共有

  ASEAN諸国と共同訓練や情報共有を通じて、地域全体でのセキュリティレベル向上を目指します。  

  - ASEANサイバーセキュリティ連携訓練の実施。  

  - インシデント情報共有システムの構築。  


2. アジア太平洋経済協力(APEC)での連携

  APECを通じて、アジア太平洋地域全体でのサイバーセキュリティ強化を図ります。  

  - APECサイバーセキュリティ連携プログラムの開発。  

  - サイバーセキュリティ政策に関する経験共有活動。  


まとめ: サイバーセキュリティ戦略の必要性

国家のセキュリティと国民の安全を守るため、日本のサイバーセキュリティ戦略は不可欠です。官民連携や国際協力を通じて、国内外の脅威に対抗しながら、我が国の産業競争力と技術開発を強化し、デジタル社会の中でリーダーシップを発揮することが求められています。


参考資料

[総務省「我が国のサイバーセキュリティ戦略について」](https://www.soumu.go.jp/main_content/000853311.pdf)

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